バブル期のブームとともに秋の風物詩となった「ボジョレー・ヌーヴォー」。
解禁日である11月の第3木曜日が近くなると話題になるのが「今年のキャッチコピー」で、ユニークな表現を期待している方も多いのではないでしょうか。
本記事ではボジョレー・ヌーヴォーの歴代キャッチコピーを、
- 日本の販売業者による評価
- フランス食品振興会による発表
の2つを比較できるように年代順に一覧にしました。
本国フランスの発表と日本での評価のどこが同じでどこが違うのか、比べて楽しんでみてください。
ボジョレー・ヌーヴォーとは

ボジョレー・ヌーヴォー(Beaujolais nouveau)はフランス・ボジョレー地区でその年に収穫したブドウから作られたワインの新酒のことを指します。
「ボジョレー」は地名
ボジョレー(Beaujolais)はフランス・ブルゴーニュ地方南部に隣接する丘陵地帯の名前で、ヌーヴォー(nouveau)は「新酒」を意味します。
意味としては「甲州の新酒」とか「山形の新酒」をイメージするとわかりやすいと思います。
読み方は「ボジョレー」「ボージョレ」「ヌーボー」「ヌーヴォー」どれが正しい?
ボジョレー・ヌーヴォーのカタカナ表記は存在します。
Webサイト上では以下のように媒体によって使い分けられていますが、同じ媒体でもページによって表記が違うこともあります。
- アサヒビール:ボージョレ・ヌーヴォ
- サントリー:ボジョレーヌーヴォー
- キリン:ボージョレ・ヌーヴォー
- エノテカ:ボジョレー・ヌーヴォー
そもそもフランス語の Beaujolais nouveau を日本語の発音で表現するのが難しいため、どれが正解ということはありません。
起源には諸説あり
ボジョレー・ヌーヴォーは毎年11月の第3木曜日に解禁され、近年では毎年お祭りのようなにぎわいを見せていますが、その起源は以下のように諸説あります。
- 地元の農民が収穫を祝った
- 不作時に即醸法で作ったところ偶然フルーティに仕上がった
- その年のブドウの出来をチェックするために業者間のみで取引されていた
どれも実際にありそうな話ではありますが、ボジョレー・ヌーヴォーは特殊なワインでありワインショップやレストランで提供されている一般的なワインとは違うことは確かといえそうです。
日本ではバブルをきっかけにブームに
ボジョレー・ヌーヴォーが日本に空輸されるようになったのは1976年です。
大きなブームとなったのはバブル経済真っ只中の1980年代後半。
日付変更線の関係上、本国フランスよりも早くフランスワインを味わえるというのが「ジャパン・アズ・ナンバーワン」を信じていた当時の人々の心をくすぐったのもあり一大ブームになりました。
その後バブル経済の崩壊とともにボジョレー・ブームも下火になりましたが、業界や販売店による地道な販促活動のおかげで現在はバブル期以上の市場規模にまで成長しました。
ボジョレー・ヌーヴォーのキャッチコピー一覧
ボジョレー・ヌーヴォーのキャッチコピーのうち日本で多く目にするのは「日本の販売業者による評価」で、実はこれとは別に「ボジョレーワイン委員会による品質予想」をもとに、フランス食品振興会(SOPEXA)が発表しているものがあります。
以下に歴代ボジョレー・ヌーヴォーのキャッチコピーを一覧にしました。
年 | 日本の販売業者による評価 | SOPEXA |
1983 | これまでで一番強くかつ攻撃的な味 | |
1985 | 近年にない上物 | |
1992 | 過去2年のものよりフルーティーで、軽い | |
1995 | ここ数年で一番出来が良い | |
1996 | 10年に1度の逸品 | |
1997 | まろやかで濃厚。近年まれにみるワインの出来で過去10年間でトップクラス | |
1998 | 例年のようにおいしく、フレッシュな口当たり | |
1999 | 1000年代最後の新酒ワインは近年にない出来 | |
2000 | 今世紀最後の新酒ワインは色鮮やか、甘みがある味 | 出来は上々で申し分の無い仕上がり |
2001 | ここ10年で最もいい出来栄え | ここ10年で最高 |
2002 | ①過去10年で最高と言われた01年を上回る出来栄えで1995年以来の出来 ②1995年以来の出来 | 色付きが良く、しっかりとしたボディ |
2003 | 110年ぶりの当たり年 | 並外れて素晴らしい年 |
2004 | 香りが強く中々の出来栄え | 生産者の実力が表れる年 |
2005 | タフな03年とはまた違い、本来の軽さを備え、これぞ『ザ・ヌーボー』 | 59年や64年、76年のように偉大な年の一つ |
2006 | 今も語り継がれる76年や05年に近い出来 | とてもうまくいった年 |
2007 | 柔らかく果実味豊かで上質な味わい | 果実味が豊かでエレガント |
2008 | 豊かな果実味と程よい酸味が調和した味 | フルーツ、フルーツ、フルーツ |
2009 | 過去最高と言われた05年に匹敵する50年に一度の出来 | 数量は少なく、完璧な品質。桁外れに素晴らしい年 |
2010 | ①2009年と同等の出来 ②今年は天候が良かった為、昨年並みの仕上がり。爽やかでバランスが良い | 果実味豊かで、滑らかでバランスの取れた |
2011 | ①100年に1度の出来とされた03年を超す21世紀最高の出来栄え ②出来が良く、豊満で絹のように滑らかな味わい | 3年連続で、偉大な品質となった |
2012 | ①偉大な繊細さと複雑な香りを持ち合わせ、心地よく、よく熟すことができて健全 ②糖度と酸度のバランスが良く、軽やかでフルーティーな仕上がり | 心地よく、偉大な繊細さと複雑味のある香りを持ち合わせた |
2013 | みずみずしさが感じられる素晴らしい品質 | 繊細でしっかりとした骨格。美しく複雑なアロマ |
2014 | ①太陽に恵まれ、グラスに注ぐとラズベリーのような香りがあふれる、果実味豊かな味わい ②2009年の50年に一度のできを超える味わい | エレガントで味わい深く、とてもバランスがよい |
2015 | ①過去にグレートヴィンテージと言われた2009年を思い起こさせます ②今世紀で最高の出来 | 記憶に残る素晴らしい出来栄え |
2016 | エレガントで酸味と果実味のバランスがとれた上品な味わい | エレガントで、魅惑的なワイン |
2017 | ①フレッシュな香りと上品なタンニンがある、まろやかな味わい ②豊満で朗らか、絹のようにしなやか。しかもフレッシュで輝かしい | 豊満で朗らか、絹のようにしなやか。しかもフレッシュで輝かしい |
2018 | 理想的な条件の下、すばらしいヴィンテージへの期待高まる | 2017年、2015年、2009年と並び、珠玉のヴィンテージとして歴史に刻まれるでしょう |
2019 | ①バランスのとれた味で、適度な量と高い品質のワイン ②生産者のテクニックが重要な年 ③凝縮した果実味と上品な酸味が味わえる | 有望だが、生産者のテクニックが重要な年 |
2020 | 偉大なヴィンテージ 濃縮なワイン | 非常にバランスが取れた爽やかさのある仕上がり |
2021 | 採れたてのいちごにかじりついたような味わい | 挑戦の末たどり着いた、納得のヌーヴォー |
日本の販売業者によるキャッチコピーは、複数の団体や個人がそれぞれの解釈で発表していることもあるため、複数ある年もあります。
秋の風物詩 ボジョレー・ヌーヴォーを楽しもう
本記事ではボジョレー・ヌーヴォーの起源やキャッチコピーを紹介しました。
新茶や新米など、季節の初モノを好む日本の文化とも相性が良いからか、すっかり秋の風物詩となりました。
ワイン初心者はもっとワインを好きになるきっかけに、ワイン愛好家はその年のワインの出来のチェックのために、毎年11月はボジョレー・ヌーヴォーを楽しんでみてはいかがでしょうか。
